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「八雲プロジェクト」匠のご紹介

白地を生かす技法が美しい藍染めを支えています

初山一之助氏。
日本が誇るあらゆる分野の伝統技術には、その製品を見る限り総ての技術が見える事はほとんど無い。仕上がった染の浴衣もまたしかりである。初山一之助氏は藍染め浴衣の白地部分を残すために欠かせない糊防染技法・糊付けの無形文化財長板中形技術保持者である。

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長板に貼った浴衣地に無形文化財の糊付けをする初山寛氏。裏面の糊付けの目安になるよう表面の糊は赤く着色する

6メートルほどの板(長板)の上に白地の浴衣地を真っ直ぐぴったり貼り、といっても総てが手作業で印がある訳ではなく正に目利きで真っ直ぐに貼る。真っ直ぐ貼らないとその上にのせる柄の掘った型紙がずれて、当然柄も歪むからだ。その白地の上に30~40センチの長さ(もっと長い型紙もある)の型紙をのせて印を合わせながら一気に糊付けをしていく。糊が防染の役目をはたす。もたもたしてはいられない。伸び縮みする型紙が乾くとズレが生じるからだ。反物は約12メートルあるので2回繰り返す。糊付けした個所が染め上げた時に白地として残り、柄が生まれる。
一般の着物が表のみの染めに対し、浴衣は裏も表と同位置に白い部分は白く、藍染め部分は藍にする両面同柄染めにするのが江戸の粋とされた。その為裏にも表と同位置に糊付けをする、最初につけた表面の糊がはがれない技術が要求される。長板にぴたっと貼るため複雑な柄には型紙が多くなり糊がはがれやすいのである。

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時間を見計らいながら藍染めを仕上げる初山武雄氏。糊付けした浴衣地を薄い藍の液に浸し干す。さらに濃い液に浸しては干すを繰り返し、思う色に仕上げていく。干すことで空気に触れ美しい藍色になる

初山家は一之助氏の後継者のご長男初山寛氏、一之助氏のご兄弟・初山武雄氏も糊付けの無形文化財保持者として指定を受けている。一家で、糊防染の伝統技術を保持し、糊防染された浴衣を藍染めまで仕上げている。

4代目の長男寛氏は18歳から父親を師匠として42年間一筋に藍染め浴衣の製作に関わってきた。今は寛氏が中心になってのり付けを、叔父さんにあたる武雄氏が糊付けをおえた浴衣の藍染めを担当しているが、白い浴衣地を美しい藍染めにするための最初の行程、大豆の液を作るところから始まって(刷毛で浴衣地に大豆のタンパク質をぬる)、全行程の手作業を一家でささえている。糊は暑い季節は腐りやすく、藍染めは寒い時期に色の発色が良いため、10月から4月までと寒い時期の過酷な作業だ。

初山家にはすばらしい江戸時代からの型紙を所蔵している。江戸時代後期の日本三景の84枚にも及ぶ型紙や弥次喜多道中の型紙などを保持している。染め上げるには、まず位置を確認しながら84枚の型紙を1枚づつ当てて白地を残すための糊付けをしなければならない。糊が剥がれてはならない、技術が問われる仕事である。

東京和晒