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「八雲プロジェクト」匠のご紹介

樹齢300年余の丸太ひのきに刃物を当てる瞬間、偉大なものへの畏敬の念に近い思いがよぎる

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素材、道具、そして技術に毎日向き合う日々が新たなフォルムを生むと川又栄風氏は言う

川又栄風氏。
東京は隅田川を渡り深川方面に車を走らせると、何時しかゆるやかな時の流れに変わる。大通りながら落ち着いたどこか懐かしい街のたたずまいの中に桶栄はある。

桶栄の店の引き戸を開けると、いきなりひのきのいい香りに包まれ、思わず香りを吸い込んだ。「いい森林欲になりますよ」と桶栄の4代目川又栄風氏が微笑みながら現われた。

昔は分業だった結桶を、4代目栄風氏は丸太から仕入れ、玉きり(大鋸で丸太を切る)から、割る、削る作業、木の質に合わせて3ヶ月から1年間乾燥させるなど、70はある全行程手作業を一人でこなしている。結い桶とは、いくつものパーツを組み立てて一つの形ができることから桶を結うと表現するが、この結桶技法は、木(パーツ)の合わせ目のみで水が漏れないようにする技術で世界に類が少ない技法である。最後に塗装はせず、木地の「みがき仕上げ」のみである、ごまかしがきかない。風合いを大切に暖かみ、優しさと高貴な香りが漂う。

彼は言う「700年余りも作られ、使われ続けている桶は、常にいつの時代にもコンテンポラリーであったから今まで生き続けているのだと思います。技法は変わらずとも時代、時代に求められるものが作られてきたから今に至っている」と。新しい物作りだけをめざそうとは思っていない栄風氏は厚さや寸法を少し修正して、今のくらしにしっくりくる機能、フォルムを追求している。同時に現代の生活様式に合わせた美しく、無駄の無い極めてシンプルな新しいテーブルアイテムを生み出している。

さらに、川又氏のこだわりは、抗菌力が強く、木肌のきめ細かな樹齢300年余の国産ひのき、さわら材を丸太から仕入れて作りつづけることである。

深川桶栄